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中小企業は「従来型RAG」から一歩先へ、「Agentic Search」へ進むべき

中小企業は「従来型RAG」から一歩先へ、「Agentic Search」へ進むべき

26/02/09 20:50

Anthropicのエンジニア、Boris Cherny氏の「RAGを捨て、Agentic Searchを選んだ」という発言は、AI業界に衝撃を与えました。しかし、これは単なる技術的な好みの問題ではありません。 株式会社コンテクシアでは、この変化を「AI導入のフェーズが変わったサイン」と捉えています。

1. 「従来型RAG」とは何を指すのか?

一般的にRAG(検索強化生成)と呼ばれている仕組みは、正確には「従来型RAG(ベクトル検索型)」を指します。

  • 仕組み: 全文書を数値(ベクトル)化して専用DBに保存。

  • 特徴: 似た情報を拾い出すのが得意。

  • 課題: 事前のインデックス(目次作り)にコストがかかり、情報の鮮度を保つのが難しい。また資料が多くなれば多くなるほど「似ている」精度のチューニングが難しくなる

2. なぜ「従来型RAG」では不十分だったのか

Boris氏が指摘し、私たちコンテクシアも現場で直面してきた「従来型RAG」の壁は、主に情報のノイズと鮮度です。

コンテクシアの現場メモ: 従来型RAGを導入した中小企業様から、「AIが去年の古いマニュアルを参照して回答してしまう」「確かに類似した資料だがこっちを参照してほしいのではない」という相談をよく受けます。これは、ベクトルDBを更新する手間(運用コスト)が、現場のスピードに追いついていないことが原因です。

これまでは、AIモデル自体の進歩によって問題が解決する、つまり大量のデータを投入すれば十分だという楽観的な意見もありましたが、そうではないことが明確になってきました。

3. Agentic Search(自律探索型)という選択肢

対するAgentic Searchは、AIがその場で「どのファイルを確認すべきか」を判断し、直接読みに行く仕組みです。

  • 鮮度: 今そこにあるファイルを読みに行くため、常に最新。

  • 精度: 意味の近さ(曖昧さ)ではなく、ファイル構造やコードの論理的な繋がりを辿る。

4. 中小企業にとっての「現実的な解」

決して「従来型RAG」を否定しているわけではありません。

  • 従来型RAGに向くもの: 膨大な過去のナレッジ、FAQ、動かない規程集。とりあえず似たものを引張出したいとき。

  • Agentic Searchに向くもの: 日々更新されるプロジェクト資料、複雑な構成のファイル群。

これらを組み合わせ、「運用コストを最小化しつつ、回答精度を最大化する」のがコンテクシア流の支援スタイルです。

まとめ:大切なのは「AIが働きやすい環境」を作ること

Boris氏の決断から学ぶべき真の教訓は、「AIに最高の結果を出させるには、情報の置き場所を整える(環境整備)ことが、高度なDBを組むことよりも重要である」という点です。


たとえるなら、「高性能なルンバ(AIエージェント)」を買う前に、「床の荷物を片付ける(環境整備)」ほうが、掃除の質は上がるということです。

Agentic Search構築の具体例:中小企業向け3パターン

パターン1:【ノーコード・低コスト型】既存ツールを「エージェント化」する

自社でコードを書かず、すでにエージェント機能(Agentic機能)を備えたプラットフォームを活用します。

  • 使用ツール: Salesforce AgentforceMicrosoft Copilot Studio

  • 構築方法: 1. 接続: AIに社内のCRM、Google Drive、SharePointなどを接続します。 2. 指示(Instruction): 「問い合わせが来たら、まず顧客の購入履歴を確認し、次に最新の製品マニュアルを探して回答案を作れ」と手順を教えます。 3. 動作: AIは質問に対し、従来型RAGのように「全データを検索」するのではなく、指定された「道具(APIや検索)」を使って自律的にステップを踏んで回答します。

  • メリット: サーバー管理が不要。現場の担当者がGUIで調整可能。

パターン2:【エンジニア向け・高精度型】オープンソースで「探索ツール」を組む

エンジニアがいる、もしくは外注する場合の構成です。

  • 使用ツール: LangChain または LlamaIndex + Python

  • 構成要素:

    • Planner(計画): ユーザーの質問をタスクに分解する。

    • Tools(道具): grep(ファイル内検索)、duckduckgo-search(最新のWeb検索)、SQLツール(社内DB参照)。

  • 具体例: 「A商品の在庫が減っている理由を報告して」という指示に対し:

    1. AIがSQLツールで在庫推移を確認。

    2. grepで社内共有フォルダの「日報」から「A商品」という単語を検索。

    3. 「競合のキャンペーンが原因かも」と推論し、Web検索で競合情報を確認。

    4. すべてを統合してレポートを作成。

  • メリット: 自社の業務に特化した「道具(ツール)」を自由に追加できる。

パターン3:【最もシンプル・運用重視型】「構造化フォルダ」×「AIアシスタント」

実はこれが、多くの中小企業にとって最もコストパフォーマンスが良い方法です。

  • 使用ツール: Claude.ai (Project機能) または ChatGPT (GPTs)

  • 構築方法:

    1. 環境整備: 「マニュアル」「顧客対応記録」「商品仕様」など、フォルダごとにPDFやテキストファイルを整理してアップロード。

    2. インデックスファイルの設置: フォルダ内に README.md を作成し、「このフォルダには何があるか」を人間が記述しておく。

    3. 指示: 「回答する際は、まずREADMEを読み、どのファイルを見るべきか判断してから詳細を確認してください」とプロンプトに書く。

  • メリット: 開発費ゼロ。ファイル整理さえすれば、今日から運用開始できる。

株式会社コンテクシアが推奨するステップ

中小企業がAgentic Searchを導入する場合、いきなり「パターン2」のような複雑なシステムを目指すのは避けるべきです。

  1. まずは「情報の整理」から: フォルダ名、ファイル名をAIが読みやすい形に整える。

  2. パターン3でプロトタイプ作成: 無料〜数千円の範囲で、AIが自律的にファイルを探せるかテスト。

  3. 必要に応じてパターン1・2へ拡張: 手作業でのアップロードが限界になったら、API連携やノーコードツールへの投資を検討。

AIに合わせるために業務を変えるのではなく、貴社の業務がより円滑に回るための『最適なAIの形』を、私たちコンテクシアと一緒に見つけてみませんか?


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真屋 明典
ビヨンドウェブ開発者(TensorFlow認定開発者)
日本の中小企業の価値は10倍になると思っている人。「Small is beautiful」が座右の銘。

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